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私はそもそも新しい料理を作ろうとは思っていないんです。私にとって料理というのは家庭料理のことで、決してクリエイティブなものではありません。季節に応じて作る家庭料理は、一人一人にとって親しみのあるお料理です。そういった日常の料理の中でも、おばあちゃんに、「食べやすくお刺身を小さく切ってあげよう」、「少し野菜を増やそう」といった心遣いをすることが料理の工夫だと思います。私が皆さんにお伝えできるのは、新しいレシピを伝えるのではなく、昔ながらのお料理を大切に、少し新しく見せる工夫や誰にでも作っていただけるようなコツを分りやすく伝えることだと思っています。
〝旬”の今一番おいしい元気な食材を料理すること、食べてもらうことだと思います。旬のものを食べると、「あぁまたこの季節がきたなぁ」と思います。料理を見ると、何かしらの思い出がよみがえる、会話の糸口になったりしますよね。ただ食べるだけの存在ではなく、私たちの五感をくすぐって、いろいろな感情を喚起してくれる力があると思います。そして、元気になる。
旬のものを食べるということは、その「生き物の命の在り処を私たちが食べること」です。分かりやすく言うと、春はタケノコが旬ですよね。まさに勢い良く成長している、動いている部分を私たちは食べているのです。夏の茄子やトマトは、水分をたっぷり含んだ実の中に種子がある。秋はリンゴとか栗とか、それこそ種子そのもの。冬は大根、白菜など春に備えて地面の下で力を蓄えているものです。この春、夏、秋、冬の生命のサイクルに合わせて、私たちは栄養価値が一番あるところを食べているのです。これが旬のものが美味しい理由です。
季節のもの、料理に手をかけすぎないこと、小さく切り刻んで煮るよりも、野菜なども丸ごと煮ること、その方が美味しいと思いますし、手がかかりません。野菜は野菜だけで、料理して、あと魚を焼くとか、シンプルな献立に。時にはごちそうを食べすぎてしまうこともありますから、そういう時はその前後2~3日の間でトータル的に栄養バランスを調整していけば良いと思います。
体重が減って、10歳くらい若返りました。きっかけは、40を過ぎた頃から体重が増えて体力が落ちたこと、体調が悪いと自覚したことです。それでも仕事の質を落とすわけにはいきませんから、ものすごく頑張って維持しようとする。そうすると、しんどいから周りの人にも迷惑をかける。そういうことも少しずつ改善されます。日常的なストレスを発散して、体調だけでなく、日常の仕事や暮らしの部分が充実して健全になりました。自分の中にあった悩みも、その頃から一度リセットしたみたいです。今では良いことばかりですから、やめる理由が見つかりません。大切なのは、ゆっくりでも良い、忙しくて走らない日がしばらく続いても良いので、継続することです。
少々具合が悪くても、私は寝るよりも走ります。走ると体温が上がって免疫力が高まるためか、元気になれるんです。これを、「積極的休養」と言いますが、精神的に疲れていても、積極的になることで充実した毎日を送れると思います。
次の世代を担う学生たちに、すばらしい日本の食文化を知ってもらいたいと思って、早稲田大学で月1回講演会を開いています。私の尊敬する食のスペシャリストたちをお招きして、これまで語られることはなかった仕事のお話を聞き出そうという試みです。美味しいとか不味いとか、味覚だけで判断しがちな食の秘密・食の背景にあるものを調べることで、すばらしい発見があるのです。それは食の世界にいる私たちにとって大変プラスになることだと思います。どなたでも参加できますから、興味のある方は是非来て頂きたいですね。
皆さんには、ご家庭でちゃんと料理を作って欲しいですね。料理を作るということは、その人に愛情をあげることだと思います。一人暮らしであっても、食べることを大切にすることが、自分を大切にすることになるのだと思います。
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